注文住宅での新築やリノベーションのプランニングの際には、理想の家に求めることが徐々に増えてしまい、まとまらなくなった、情報が多く、どれも良く思えて取り入れているうちに予算オーバーになってしまったという失敗例は少なくありません。現在そのようになってしまっている方や、今後プランニングする予定という方は、理想の家づくりで、こだわりたい優先順位を決めておくことが重要です。
しかし、こだわるべき優先順位を決めるにあたっても、何を優先すべきか分からないという方もいらっしゃいます。そこで、今回は家づくりのプロの目線から、家づくりで力を入れるべき優先順位を決めるうえでのポイントをご紹介したいと思います。
1.快適に暮らすうえで普遍的で価値がある部分のこだわりは優先すべき!
優先順位を決めるうえで上位にすべきなのは、後々簡単に変えることが出来ない家の基礎となる部分、構造や、日々の暮らしの快適さに大きく影響する家の特性部分です。どんな点があるか、ご紹介したいと思います。
■断熱性・気密性の高い家
消耗品とも言える、耐用年数のある設備機器や仕上げの内装材などは、定期的なリフォームが必要になるため、いつかは変えることが出来るものです。ある程度妥協せずに納得したものを採用すべきですが、限られた予算の場合、最上級にこだわる必要はないかもしれません。対して、基礎や構造部分は建て替えや大がかりなリノベーションを行わなければ簡単に追加したり、変えたりすることが出来ません。家全体に対して施工金額も大きな部分を占めているため、その部分を妥協すれば費用面ではお得になる気がするかもしれませんが、家そのものとも言えるベースとなるような部分だからこそ、こだわりを優先することを意識しましょう。
例えば、断熱性や気密性の高い家を目指したいのであれば、優先順位の上位に置くべきです。断熱材は表面から見えない部分に敷き詰めます。数年後に断熱性を上げるリフォームを行うことも出来ますが、壁や天井、床を剥ぐような大がかりな工事が必要になりますし、家全体の快適さや光熱費(ランニングコスト)、住む人の健康に大きく影響する部分なので、新築時やリノベーション時など、したいと思っている時点で優先させて行うべき価値がある分野と言えます。
■耐震性を高める!
家づくりで、命や健康など住む人自身や暮らしそのものを守ることより優先すべきことはありません。その点を考えるなら、地震大国日本において、地震に備えた家づくりを行うことは優先すべきことです。耐震施工は、家の造りに影響する部分なのでなおさらです。
建築基準法で定められている耐震基準を満たすことは当然ですが、さらに耐震等級2以上の、被災しても家が倒壊せず、軽微な補修のみで暮らし続けることが出来る家にするといった、耐震性の高い家づくりは優先する価値があります。
2.住みながらでも楽しめる家づくりもある!
家づくりのベース、快適さや健康に影響する部分は始めの段階で力をいれておくべきなのに対し、反対に力を入れすぎない、作り込みすぎない方が、メリットがある部分もあります。むしろ、住みながらの変化や家を育てることを楽しむことが出来るかもしれません。どんな点は作り込みすぎないようにすべきか、ご説明したいと思います。
■可変性のある間取りに!
間取りを考えるうえで、今のライフスタイルに合わせて細かく作り込みすぎた結果、暮らしに変化が生じた時や、世代交代して住み手が変わった時に住みづらい家になってしまった、こだわった部分がむしろ家のデメリット部分になってしまったという失敗ケースがあります。
今の家族構成や部屋の用途に合わせて、部屋数を決め、壁で細かく仕切ったり、デザイン重視で凹凸の多い間取りは、住む人数の増減に対応出来なかったり、家具の配置場所や大きさが固定してしまい模様替えや買い替えが出来なかったり、変化に対応できない間取りになります。それは、ライフスタイルの変化はもちろんのこと、使い方が固定されてしまうので次の世代に受け継ぎにくい間取りと言えます。長く住める家、快適な家の構造になっていても暮らしにくければ意味がありません。
間取りを考える際には、シンプルでフレキシブルにすることを意識しましょう。例えば、必要な部屋数を把握して間取りを決めることは大切ですが、何部屋は絶対に必要だと部屋数を優先させるより、可動出来る間仕切りにして部屋数を増減できるようにしたり、広さを変えられるようにしたり、部屋の用途を固定しすぎないようにすることを優先させて間取りを考えるなら、ライフスタイルや使い手の変化に対応出来ます。
■作り込みすぎない収納にする!
作り込みすぎてはいけない他の点として収納があります。快適で片付く部屋=収納が多い・広い、とイメージされる方は多いですが、実際には持ち物のサイズや多さが影響しています。
持ち物をしっかり把握して必要な物だけを持っている人は、その量が収納できるスペースが、使いやすい適切な位置にさえあれば、部屋は快適で片付きます。持ち物を把握しないまま、とにかく収納数やスペースを増やしたり、棚を沢山設けたりすると、どんなに収納があっても、上手く片付かず、収納スペースの外に溢れたり、持ち物が増える一方になったりする危険性があります。
多くて広いほど便利そうだからという理由だけで収納スペースや棚を作ることを優先させるのではなく、まずどこに何を収納したいのか、持ち物を確認することが大事です。また、間取りと同様、収納に関しても使い手や用途が変われば収納する物の量やサイズも変わります。子どもの成長に伴って、幼い時に必要だったオモチャの収納スペースは不必要になり、勉強道具を収納する場所や、サイズが大きくなる洋服を収納する場所が必要になるかもしれません。そのため、収納内も作り込みすぎない方がおススメです。
可変的な間取りに収納スペースも加えて考えるようにしてみましょう。例えば、収納として使いたい空間にはあえて扉をつけずにオープンにしておき、ロールカーテンで隠してクローゼットにしたり、キャビネットなどの家具を置いて使ったりしておけば、ライフスタイルの変化に伴って収納する物が無くなった時には、ワークスペースや趣味スペースとして活用することも出来るかもしれません。
3. まとめ
家づくりの際には、理想が膨らんだり、情報が多すぎたりすると、予算オーバーになってしまい、何にこだわることを優先すべきか分からなくなってしまいがちです。そのような場合は、断熱性や気密性、耐震性など家の造りに影響する部分や、快適さ、そこに暮らす人の命や健康を守ることに大きく影響する部分を優先順位の上位に置きましょう。逆に、間取りや収納に関しては、数やデザイン、中身にこだわりすぎて作り込んでしまうとライフスタイルの変化や、世代交代に対応できない家になってしまうので、可変的にしておくことが重要です。むしろ、間取りや収納は作り込みすぎないという意識を、優先順位の上位に置いておきましょう。
家づくりで力を入れるべき優先順位を、まず決めたうえでプランニングすることによって、快適で住み良い家づくりをスムーズに行えます。