日本には寒い家が多いと言われています。今年は暖冬だとはいえ、部屋が寒くて朝、布団から出るのが辛かったり、リビングに長く居ると徐々に冷え込んできたり、入浴のために衣服を脱ぎ着するのが辛いと感じたりしている方は少なくありません。冬だから仕方がない、と思われるかもしれませんが、寒い家には危険が潜んでいます。しかも、冬でも暖かく快適に暮らすことが出来ている家もあります。
快適に暮らし、家族の健康を守るために、どんな家にすれば良いのか、ご説明したいと思います。
1.あたたかい家は家族の健康を守る!
家の中の温度は暮らす人にとって心地良い温度かどうかだけではなく、体調にも影響します。冬の寒い時期に家の温度がどのように健康に影響するのかご説明したいと思います。
■寒い家は危険!?
国土交通省が厚生労働省と連携して2014年~2019年の5年間、スマートウェルネス住宅等推進調査事業を行い、住宅と健康の関係性を全国で調査しました。その結果、寒い家には下記のような危険が潜んでいることが分かっています。
●血圧が高くなる:室温の低い家に住む人ほど、起床時に血圧が高くなる傾向があり、高齢者ほど血圧の上昇が大きくなります。
●入浴中の事故リスクが高くなる傾向がある:入浴中の事故は冬場に集中しており、1年間の入浴中の急死者数が約19,000人との推計もあります。そのほとんどは65歳以上で、高齢者の方は特に注意が必要です。 また、居間や脱衣所が寒い住宅では、入浴事故のリスクが高いとされる、熱めで長めの入浴をする傾向があります。
(出典:住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査第3回中間報告会~国土交通省スマートウェルネス住宅等推進事業調査から~室温と血圧・活動量・諸症状の分析から得られつつある地券を速報)
他にも、寒い家に住んでいると、手足の冷えやアレルギー、のどの痛み、喘息、睡眠不足などの不調の原因にもなっていることが分かっており、寒い家が病気やケガを引き起こしかねません。
イングランド公衆衛生庁でも、温度が低いと健康リスクがあると報告しており、18℃未満では、血圧の上昇・循環器系疾患の恐れ、16℃未満では、呼吸器系疾患に対する抵抗力低下、5℃になると低体温症を起こす危険大と報告しています。
■部屋の中の温度差も危険!
中には、長い時間を過ごすリビングや寝室だけは、暖房器具を使って暖かくしているから大丈夫だと思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、寒い家で一部だけ暖かくしたことによって生じる、部屋と部屋の温度差にも危険が潜んでいます。
部屋と部屋に温度差があると移動時に血圧が変動します。元々寒い家であれば特に、室内移動による急激な温度差によって、血圧が大きく変動し、失神や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こす『シートショック』が起こりえます。冬は特に、ヒートショックで亡くなるケースも増えています。
部屋と部屋の温度差以外にも、断熱性能の低い家では、部屋を暖めていても、外気に近い天井や壁、床の温度が低く、ひと部屋の中でも温度差が生じているということは少なくありません。部屋の中に寒い空間があると体感温度が低くなり、いっそう寒く感じてしまいます。
住む人の命や健康を守るためには、家を暖かい空間にする必要があるのです。
2.あたたかい家=高断熱な家 にする!
室内を快適な温度、あたたかい家にすることで家族の健康を守ることに貢献できます。では、どのようにあたたかい家にすることが出来るのでしょうか?あたたかい家をつくる方法をご紹介したいと思います。
■高断熱な家で寒い家からの脱却!
WHO(世界保健機関)は「住まいと健康に関するガイドライン」で、寒さによる健康影響から居住者を守るための室内温度として18℃以上を強く勧告し、日本のように寒い季節がある地域の住宅では新築時や改修時の断熱材設置を条件付きで勧告しています。
家の中で温度差を無くして、寒い冬でも18℃以上を保つためには、断熱性能を上げることが重要です。壁や床、天井に高性能な断熱材を隙間なく入れることや、断熱性能の高い窓を設置して、あたたかい家をつくりましょう。
家の断熱性能を上げたうえで気密性も高ければ、暖房器具で部屋を暖めると熱が逃げないため、すぐに暖かくなり部屋全体が一定の快適な温度に保たれます。
■医療費よりも初期費用に!
高断熱、高気密なあたたかい家にするには、新築でもリフォームでも標準的な家づくりに比べて費用がかかります。家づくりやリフォーム費用を出来るだけ抑えたいと思っている人にとって、断熱性の高い家をつくるためにお金をかけることに本当に価値があるのだろうかと躊躇してしまう原因となるかもしれません。
しかし、初期費用はかかっても、快適な温度が安定して保てるため冷暖房の効きが良く光熱費を抑えることができ、ランニングコストは安くなります。
しかも、健康が守られれば医療費を支払うリスクも避けられます。健康で暮らせることで、無駄な出費を防ぐことが出来るので、あたたかい家を造るための費用は、価値ある初期投資と言えます。
3. まとめ
冬は寒いから家の中が寒くなるのは仕方がない、と思うのは危険です。寒い家や、部屋と部屋の温度差がある家は血圧が高くなったり、血圧の急激な変動でヒートショックを起こしたり、入浴中の事故リスクが高くなったりと、病気やケガの原因となりえます。家族の命や健康を守るには、家全体を安定して18℃以上に保てるように、断熱性能の高いあたたかい家にしましょう。新築時やリノベーション時に費用はかかりますが、病気のリスクや、それに伴う医療費を支払うリスクを抑えられるだけではなく、健康に快適に暮らせるため、価値ある投資と言えます。
寒い家から脱却して、家族の健康を守る「あたたかい家」をつくりましょう!