夏は涼しく、冬は暖かく、快適な室温で暮らすためには断熱性の高い家にすることが重要です。断熱性が高い家は冷暖房機器に頼らず、使いすぎることもないため、少ないエネルギーで暮らせるので、地球環境を守るうえでも効果的で、SDGsの取り組みのひとつとしても掲げられています。
そのため、新築やリノベーションで家の断熱性能を意識して家づくりを行う方が増えています。しかし、断熱材を使うということだけ理解していても、断熱材に種類があり、施主として選択肢があることまでは知らないという方は少なくありません。家の性能を上げるうえで重要な役割を果たす断熱材にどんな種類があるのか、断熱性能を上げる点でどんな点を意識すべきなのかをご説明したいと思います。
1.断熱材にはどんな種類があってどうやって選べばいいの?
断熱材を使うことが快適な家に繋がることはある程度理解していても、断熱材に種類があって家づくりを行ううえで選択肢があることまでは把握できていない方は少なくありません。どんな種類があって、どのように選ぶことが出来るのかをご紹介したいと思います。
■断熱材の種類は?
断熱材には大きく分けて「繊維系」と「天然素材系」、「発泡プラスチック系」があります。
●繊維系:グラスウール・セルロースナノファイバーなど
●天然素材系:羊毛・炭化コルクなど
●発泡プラスチック系:ウレタンフォーム・押し出し発泡ポリスチレンなど
壁や天井の中に吹き込んで施工する方法や、板状のものを敷き詰める方法、吹付け発泡する方法など、断熱材の種類によって施行方法も異なり、工事期間や費用も違います。
さらに、工法も大きくわけて2種類あり、壁や天井の中に断熱材を充填する「充填断熱工法」と、柱や梁などの外側から家全体を丸ごと覆う「外張り断熱工法」があります。この場合も、対応する断熱材の種類や、施工費用が異なります。
■家族の健康のこと地球のことを考えて断熱材を選ぶ!
断熱材を選ぶ際には、断熱性能の高さ、費用を比較して選ぶことは勿論のこと、他にも素材の特性を比較して選ぶことも大切です。
例えば、地球環境のことや住む人の健康を守ることを考えるのであれば、自然素材や天然素材を使った断熱材を選ぶことで、地球にも人体にも優しい素材を選ぶことが出来ます。
また、断熱材の種類によっては、外気との温度差によって結露を起こし、その結果、壁の内部でカビが発生してしまうこともあります。内部でのカビは柱などの構造部分の腐食にも繋がりますし、カビの菌が家中に広がりシックハウス症候群の原因になってしまうこともあります。この場合も、自然素材の断熱材であれば調湿性能があるので結露が発生することを防げます。
断熱材ごとの特性からメリットとデメリットを比較して、家族の健康や地球環境にどのように影響するかを考えて選ぶようにしましょう。
2.『断熱材が入っている家=快適な家』にはならない!?
断熱材が入っていれば快適な家になる、断熱リフォームさえすれば安心、と思っている方もいらっしゃいますが、断熱材を使うことで自動的に快適な家になるわけではないので注意が必要です。快適な家を造るうえでどんな点を意識して断熱材を活用すべきなのかをご説明いたします。
■断熱性と気密性を高める
断熱材を入れたのに、それほど断熱性能が上がっていないという失敗例がありますが、これは断熱材を入れてはいるものの、しっかり敷き詰められていないことに原因があるかもしれません。
断熱材は、部分的に少しだけ入れても効果はありません。壁や床、天井、屋根裏など家や部屋全体に、隙間無く、しっかりと断熱材を入れて気密性を高めなければ効果が発揮できません。
断熱材が入っていれば大丈夫と思わずに、どこにどのように入れるのか事前に確認することや、可能な限り、工事中にもしっかり敷き詰めて入っているかを確認するようにしましょう。
さらに、断熱性や気密性を高めるためには、外気の影響を受けやすく断熱材が入っていない部分となる窓や玄関などの開口部の断熱も意識することが大切です。樹脂などの断熱性が高い素材のサッシやドアを選んだり、窓をペアガラスに変えたり、内窓を設置したりすることで家全体の断熱性能を高めることが可能です。
■快適さには調湿性能も大事
断熱性能や気密性能を上げることに加え、快適な空間にするためには湿度を調整することが大切です。最近は、除湿器や加湿器を使うお宅も多いですが、家自体に調湿性能が備わっていれば電気代がかかりませんし、家全体が快適な空間になります。
調湿が出来るようにするためには、壁や床の素材を自然素材にして、空気中の湿度が高い時には湿気を吸って、低い時には湿気を放出する、自然素材特有の呼吸をする性質を活かすことで家自体の調湿性能を高めることが出来ます。
そして、断熱材も調湿性能のある素材、例えば、セルロースファイバーを選ぶことで、さらに調湿性能を高めることが出来ます。
3. まとめ
家を快適な室温に保つためには断熱性の高い家にすることが重要です。断熱性を高めるためには、断熱材を活用しますが、断熱材には、大きくわけて「繊維系」と「天然素材系」、「発泡プラスチック系」があり、特性や工法、費用など違いがあるので、それぞれを比較して選ぶ必要があります。断熱材次第で、住む人の健康や地球を守ることが出来ます。また、種類選びをしっかりと行うだけではなく、気密性を高めるように隙間なく入れることや、玄関や窓といった開口部の断熱性を意識することも重要です。また、室内の調湿性能も意識して建材や断熱材を選ぶなら、より快適な家にすることが出来ます。
断熱材次第で、家の性能を上げ、さらに快適な空間にすることが可能なので、慎重に選ぶようにしましょう。